ドリアーノが父ウーゴや家族についての質問を受け、それに答えるときはいつも、まるで彼がファミリーと袂を分かつように工房を出て行ったかのような、風評めいた噂を元にその境遇を憶測している -大抵のケースがそうなのだが- 諸兄の予想とはうらはらに、その言葉はいつになく明瞭でよどみがない。
それらの言葉は、いずれもが小生にとっても興味深いものであったが、その中から記憶に残っているセリフをひとつ、ここに記しておく。
-父から学び、授かったこと全てに感謝している。
それは自転車づくりと言う仕事だけに限ったものではない。
彼という人間、存在そのものが、私がこれまでに学んだ最も大きな “教え”なのだ-